父親が寝室として使用していた部屋が客間を想定して設けられたことは、玄関に近く、床の間があることからも間違いないでしょう。そして、この客間は接待に使われるだけではなく、宿泊にも対応できるつくりになっています。お客さんの布団を収納できるように、押入れが誂えられているのはそのためでしょう。しかし、客間には充実しているのにもかかわらず、2階の和室を除けば収納が極端に少ないことがおわかりいただけるでしょう。台所の脇には納戸がありますが、ここはいわば物置として使われ、生活に必要なこまごまとしたものや服などは、家具に収められていたと考えられます。
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高度成長期以降、物質的な豊かさを謳歌しはじめた日本では、和風建築の1部に洋風の機能をもたせた住宅が多く建てられました。この家も、そうした建売1戸建て住宅の間取りだったといえるでしょう。ところが、このような住居には、性格がはっきりとしない曖昧な空間ができてしまい、使い勝手が悪く、とても不便でした。I家の住まいにも西欧的なリビングが設けられていますが、ここにテレビなどが置かれていたからといって、食事を終えた家族がリビングに場所を移してまでだんらんを継続していたとは思えません。なぜなら、このリビングには、南側に窓、東西方向にふすまがあり、それらをふさがずにソファを置くとするならば、中央に対面型の応接セットを置くか、リビングと廊下を隔てる壁に横長のソファを置くしかなく、テレビを部屋のどこかに置くと、対面型の応接セットでは、家族全員がテレビに顔を向けられず、横長のソファを置くと、今度は家族の目線が食堂に向かってしまうからです。壁がないリビングでは、家具やテレビを置く場所が定まりません。
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